高村薫氏の『空海』を読んで

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今週は日記を一回しか書けず、仕事の忙しさに追われる日々でしたが、この頃の暖かさは春が近づいてるのを肌で感じる陽気で着るものも迷うこの頃。。。
そんな中に出会った一冊の本『空海』

高村薫氏の著作は今まで読んだ事が有りません。タイトルなら直木賞『マークスの山』、『照柿』、『冷血』と本屋に行けば目に付きますが、ハリコン自身小説は読まないので、本を手に取って読もうとは思いませんでした。
では、何故今回は高村氏の著作を読んだのかと言うと、「空海」を歴史上の人物を取り上げた題材だった為であります。
ハリコンの母は高村氏の著作は全部読んでます。大好きな作家の一人との事ですが、何が好きだと聞けば、難しい漢字の数々と文章の書き方が心に響き、人間模様の描き方が素晴らしいとの感想です。

高村薫氏の『空海』を読んで

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著者の『空海』を読み始めて見ると、空海と一体何者なのか?その人物像は?無神者の著者が何故空海に興味を募らせていったのか?そして日本の仏教にどのように影響を及ぼしたのか?

『新リア王』で親鸞賞を受賞した高村氏は、空海の足跡を辿りながら話を綴りますが、心地よい文体や語り口に吸い込まれるようにページが捲っていきます。高野山に真言宗を開創した空海はある意味時代の英傑のように思えますが、色々な一面も有りそれを丁寧に書き上げていきますが、あまり深入りはせず程よい距離を保ちながら空海に迫っていきます。
仏語の多い事柄でも丁寧に綴りますが、やはり仏教を知らないハリコンには分からない仏語は検索しながら読み進めます。でも、ある言葉には一瞬何だろうと考える一幕も。。。

文頭に出てくる接続語「とまれ」
信号の止まれでは有りません(笑)
「ともあれ」の詰まった言い方で、今まで本を読んだ中でこんな言葉で表現した方は初めてで、ある意味驚きを感じました。母が言う、綺麗な文章の一面を感じた一瞬でもあります。おかげで、日記でも「とまれ」を使わせて頂いております。

話の半ばで、空海は入滅しますが、その後の真言宗と天台宗、各地まつわる空海の業績を丹念に描きます。そこから描かれる空海は有名な弘法大師であり、神格化された空海と色んな顔を覗かせます。著者は最初に綴ってますが、空海の名前は知れども、その人物像は知らない日本人は多いと。
空海が唐より持ち帰った密教は、その当時に宮中には一躍注目されますが、それは真言宗の護摩や曼陀羅、神秘的な仏法に儀式、空海自身のオーラの影響が大きかった事と空海の完全なる体系の教えが、ある意味空海入滅後の真言宗の衰退します。同じ時代に最澄が開創した天台宗は当時はまだ体系化をなされていませんが、体系化が進むにつれて力関係が離されていきます。
真言宗の弟子や高野聖によって、高野浄土、空海の神格化により人気を集めていくのですが、四国遍路やハンセン病などにも空海が関わっているとは驚きでした。
一番驚いた事は、オウム真理教を取り上げた点でもあります。しかし、著者は程よい距離で語りますが。。。

しかし、空海は1200年後の日本にこれほどの影響を与えてるのに、空海自身の人間像がある意味ぼやけているように感じます。色んな逸話も後世に作り話がその実像をぼやけてる原因でも有りますが、著者自身も空海という人物像を掴みきれてない感じを吐露してるように感じますが、それならばこの空海と言う著作で何を語りたかったのか?
ハリコン自身は空海を通して「日本人の祈り」を語りたかったのだと思います。3・11、阪神大震災でも多くの日本人が亡き霊へ祈った原点とは何かと?
ハリコン自身が読み終えての感想ですが、そういう意味で日本人にとっての仏教とは何かと考えさせてくれた一冊でした

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