コロナウイルスとペスト、そして不条理な世界!

生活

ゴールデンウィークに入り、休暇を満喫したくてもコロナ騒ぎで家に閉じ籠もる生活を余儀無くされる拙僧は、本棚に埋もれてた一冊の本を手に読み漁り時が過ごす。手に取った書籍、その名は『ペスト』。

コロナウイルスとペスト、そして不条理な世界!

『ペスト』の著者、アルベール・カミュは、アルジェリア生まれ。1942年に出版された『異邦人』が絶賛され、『ペスト』『カリギュラ』等で地位を固めるが、1951年『反抗的人間』を巡りサルトルと論争し、次第に孤立。以後、持病の肺病と闘いつつ、『転落』等を発表。1957年ノーベル文学賞受賞。1960年、交通事故で死去 。未完で残された小説『最初の人間』が1994年に刊行されました。

そんなアルベール・カミュの代表作の一つ『ペスト』、アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に人間の中に有る「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編小説。

アルベール・カミュの著作は、一言で現せば『不条理文学』に尽きる。
著作から滲み出てくる不条理な世界は、病気、死、災禍、殺人、テロ、戦争、全体主義など、人間を襲う不条理な暴力との闘いであり反抗でもある。神の意志を否定し、特別な権力階層や全体主義を批判し、人間性の中に潜むグレーゾーンの境界線に躊躇い、簡単に決められない善し悪しに人間の倫理が存在し、不条理な世界で人は生を求めてる。と拙僧は思います。

或る青年に降りかかる不条理な世界!!

或る青年に起きた不条理な出来事を語ろう!!

或る青年は、昨今のコロナ騒ぎで収入が減収の現状を打破する為に、アルバイト探しを始める。しかし、コロナウイルス影響下では求人募集が思うように見つけることが出来ずに、時が過ぎていく。そんな中、街中に掲載された求人広告「まいばすけっと」の新店舗オープンニング求人募集を偶然に目にして応募するべく、秋葉原某所の面接会場に向かう。
面接会場において、2人の係員が手の消毒と集団院内感染(クラスター)が起きた病院名一覧が書き込まれたボードを見せて、「ここに記載された病院に立ち寄ったか?」と質問をされた。記載されてた中に、先日家族で御世話になったという事で、マスクと防護服を買い求めて届けに行った台東区の病院名が記載されていた。青年は素直にその事実を係員に述べると、「集団感染の恐れが有るので、今回の面接は受けずに違う日に受けて下さい」と告げられた。
寄付でマスクと防護服を届けに集団感染した病院に立ち寄っただけで、面接を受ける事が出来ないという現実。勿論、係員の方は会社から通達された感染防止の為に言われてた通り、会社の指示に従っただけである。しかし、青年は病気で受診した訳で無く、善意で緊急外来受付でマスクと防護服を渡しただけなのに、面接を受ける事が出来ない理不尽さ。受け答えでバカ正直に話した青年が果たして行けないのだろうか?別に後ろ指刺されるような事を青年はしてもいないのに!!

それならば、事前に面接に伺う前に、「集団感染を起こした病院名を列記して、これらの病院に立ち寄った可能性の有る方は、面接を断る」と最初に明記すれば良いのに、後出しジャンケンのように確認する事は、果たして正義なのか?これは一つ間違えれば、医療従事者などの家族者などを差別する事柄に該当する為、後出しジャンケンにして証拠を残さないようにしたのか?それでもコロナウイルス集団感染を防止する観点からは正しい。どちらも、コロナウイルスの前に悪も正義も本当は存在しないのだ。

この世は不条理がまかり通る世界である。
そして、グレーゾーンな曖昧な考えの中を、人は善意(正義)で行ってると勝手に思い込んでる事が、余計にタチが悪く世界を混沌とさせる。
昨今、兵庫県の某パチンコ店で行政指示従わずに営業を続ける事を理由に、営業停止を求めた一般人がパチンコ店員に抗議するとともに、パチンコ店で並んでる人々に向かって同じく抗議し、しかも無断撮影をする事件が発生し警察騒ぎになった。営業中止を求めて抗議をした人はコロナ拡大に防ぐことは正義で有り、営業を続けるパチンコ店と通う人々は悪と断じた。でも、肖像権の侵害を犯してまで無断撮影を行うことは、果たして正義なのだろうか?30億円規模の倒産が起きてるパチンコホール企業は、悪だから倒産して当然と思い、何の救済もせずに置くことで倒産の連鎖を繰り返し、働く人々が路頭に迷うことは当然の正義なのか?

この世界は不条理な世界であり、神は助けもしなければ、奇跡は起きない。
我々はコロナウイルスと言う悪と闘い続ける世界の中で、自分の心の中の悪(コロナ)と本当は闘い続けている。抽象的な正義と悪が線引きされてないグレーゾーンの理念で人は判断、行動するのです。

或る青年に起きた不条理な出来事で、青年が一番傷ついた事柄は、面接が出来なかった事でも、寄付で病院に立ち寄った事柄を否定された事でも無かった。
青年は、理由を納得して室内から立ち去ろうとした時に、自分が欠席者扱いになることに気付いて、自分の名前を告げようとしたのに、係員は青年の名前を聞くこともせず「電話でセンターに連絡して下さい」と告げ、あたかも青年は存在しない非現実的な対応をされたことに1番の悲しみを覚えた事を。この話を聞いた拙僧は、「ああ〜この世は不条理」と思い、本棚に埋もれた『ペスト』を手に取るきっかけになった。その話を聞いた後、どうしてそのスーパーに足を向ける事が出来ない。

アルベール・カミュの不条理文学、傑作『ペスト』一度読んでみては如何でしょうか?

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